これが最後になるかもしれない
今訪問している患者さんの中に、心不全や腎不全の疾患を抱えている患者さんがおり、
ある時採血の結果が良くないので、食生活を伺ったところ、ご本人は良かれと思って食べているものが自分の身体に負担をかけている可能性が高い事が分かった。(食事がおかず中心で塩分やタンパク質を取り過ぎている。果物の量が多く、カリウムが高い。水分も取りすぎだった。)
なので、私はできればご飯中心の食事にして、おかずや果物、水分を控えるように、具体的に説明した。本人も「良いと思って食べてたけど、いけなかったんだね。」と一旦は分かってくださっていたように思えた。
しかし、次訪問して食事内容を伺うと前と全く変わっていない事が分かった。(認知面はしっかりとされている)これはどうしたものかと思って、私では説得力に欠けるのかもしれないと思い、訪問栄養士さんにお願いしようかと、本人に勧めもしたが、断られてしまった。
そして、色々話ししている中でその方が
「私はもう十分生きたし、いつ死んでも良いと思っている。」とあっけらかんと言われた。
その方は旦那さんの介護をして、一年前に旦那さんを看取ることが出来たから、早く旦那さんのところに行きたいし、特に思い残すことはないというのだ。私は悩んだ末、
その患者さんの食事内容を変えることを一旦保留にして、体重が急激に増えたり、浮腫が増強しないかを見守ることにした。
人にとって、健康である事はかけがえのない事だし、命を大切にしなければいけない事は言うまでもない。
けれど、人にはどのように生きたいかは
自分で決めるという自由が与えられている。
健康で長生きする事はもちろん素晴らしい事だけれど、その人が何を大切に生きているかは
人によって違うのだ。そう思うと私に出来る事などほんのわずかしかない。
でも、一回一回の訪問では、もしかしたらこの訪問が最後になるかもしれないという気持ちを忘れずに、精一杯関わりたいと思う。
人の死はあまりにも突然で誰にも分からない。
動けるうちに会いたい人に会って、
やりたい事はやった方が良いと思う。
今日も前回の訪問が最後になったという連絡が届いた。
それを私はただ受け止めるしかない。
出会えた事に感謝して。