卒業式

コロナウィルスの影響で、突然の休校となり、危ぶまれた娘の卒業式も無事に開催することが出来た。出席者は全員マスク着用で、先生と卒業生と保護者だけの式だった。

子ども達はぶっつけ本番で、みんなで言う言葉のリレーなんかも紙を見ながら、時には詰まったり、止まったりもしたけどみんな一所懸命だったし、合唱もとっても心がこもっていて、素直な子ども達が眩しかった。練習なしの不安と緊張の中、精一杯頑張った卒業生一人ひとりに拍手を送りたい気持ちで一杯だった。

校長先生の話も一人ひとりを大切にする教育を目指して来られたのだろうと思われる内容で、この校長先生が居る学校に通う事が出来て本当に良かったと思え、先生方への感謝の気持ちで一杯になった。感動と感慨の中、子ども達一人ひとりが校長先生から卒業証書を受け取り退場していき、保護者だけが残された。そして担任の3人の先生が出てこられ、学年主任の先生が挨拶をされた。

「突然の休校で、子ども達にさせてあげたい事の半分もさせてあげられませんでした。いきなり、もう中学生だよって言われる、あの子達が可愛そうでなりません。

あの子達はもっと出来る子達なんです‼︎練習すれば、もっとできたはずなんです。もっと練習させてあげたかった。こんな形の卒業式になってしまい、本当に申し訳ございません!」と泣き崩れ、つられるように周りの親もすすり泣き、みたいな。

正直私は、ちょっと引いたよね。

いや、100Mは引いたよ、心の中で。

確かに突然の休校で小学校生活最後の楽しいはずの時間が奪われた事は本当に痛ましいし、怒りさえ覚えてしまう。政府がもっと、水際対策を徹底してさえいればとか、そもそも一番感染や重症化を確認されていない、小中高を一斉休校にする必要はあったのか、とか。とにかく、子ども達が今回の政府の政策の犠牲者なのは間違いないと思う。

でも、この卒業式のどこがそんなにいけなかったの?ぶっつけ本番の中みんな精一杯頑張ったじゃん。良かったよ?凄く。余計な(?)来賓の挨拶なんてものもなかったし(笑)

そもそもさ、卒業式にそんなに練習って要ります?自分の小学校時代を思い出しても、卒業式の練習って何だったんだろうって思う。

自分の言葉でもない言葉を言わされて、声の大きさとか、合ってないとか、お辞儀の角度やタイミングとか歩き方とか、散々やらされて、ひとりできないと連帯責任みたいな空気。

誰の為の卒業式なんだろってずっと思っていたよ。親や先生や在校生への感謝の言葉だって、本当に心からの言葉でなくては、虚しいものだと思う。それよりも、今回の式のように、間違ったり、詰まったりしながらも懸命に伝えようとしてくれた子ども達、練習できないままだけど、心を込めて歌ってくれた子ども達ひとりひとりの姿に涙が出たよ。

それに、心配しなくても子ども達の心はもう前に向いているよ。中学校生活を楽しみに、どの部活に入るかとか、どんな友達に出会えるかとか、どんな教科があるんだろうとか、先生はどんな人かなとか。希望に溢れているんだよ。

だから、先生、どうか子ども達を可愛そうな子にしないで、謝らないで。

そもそも練習が出来なかったのはあなたのせいじゃないよ。

謝られたら、それこそ子ども達が可愛そう。

精一杯頑張った子ども達を褒めてあげてください、と叫んでいた。心の中で。